新しい時代を生きる子どもたちへ、大人ができること

孫には新しい共育を受けてもらいたい、子育ての反省と思いと展望

教養としての世界の学び方

「教養としての世界史の学び方」( 山下範久編著、東洋経済出版社)という興味深い本を読みました。

「世界史のリテラシー」を学ぶための大学の教科書として書かれたもののようですが、これぞ私が知りたかったことという内容で、社会人の方々にもおすすめします。

学校の歴史の授業は好きではなかったのですが、深く習わなかった近現代の歴史には興味ありです。この本は、何年にどういうことが起きて…という話ではなく、歴史の見方・考え方を問われる奥深い話です。

難解な部分もあり、1回読んだだけでは理解できないのですが、「そうだったのか」という部分も多いので、興味のあるところだけ読むというのもありだと思います。

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教養としての 世界史の学び方 [ 山下 範久 ]
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まず、帯の

『西洋中心史観から全世界レベルで歴史を捉えなおす』

というところに目がひかれます。

池上彰さんも別の本で書かれていたように、歴史は勝ち組目線で書かれている、世界史の場合は、ヨーロッパ中心で書かれているということです。歴史に書かれていない地域は存在しなかった、繁栄していなかったというわけではないのです。

そして、

『世界史は最強のリベラルアーツだ!』

「はじめに」にあるように、この本は、

『世界史の知識を詰め込みなおすことを意図していない』

ので、いわゆる世界史の教科書のような内容ではありません。

求められているのは、

『歴史を見る枠組みのカタログを増やすことへの貪欲さと自分にとっての「当たり前」の規範や価値観の外部に開かれた姿勢だけ』

です。

学校の「当たり前」が、ここでも出てきていますね。

2019年4月に発行されたばかりの本です。今、「当たり前」を見直す大きな流れが来ていると感じます。

リベラルアーツというのは、大学の教養教育のことを指すようですが、社会人の一般教養として知っておくといいことだと思います。

人生100年時代、人は何歳になっても学び続けることができます。

この本を読んだら、世界のニュースの見方ががらっと変わります。見方が変われば、政治の印象も変わってきます。

もうすぐ参議院選挙がありますが、政治家が演説・公約していることの見方もきっと変わるでしょう。

国がいい方向に変わってくれることを祈りたいです。

 

時間がなくて読めない、難しそうという方のためにも、概観をつかめるよう目次を載せておきます。
実際には一部さらに小見出しがあるのですが、長くなるのでここでは省略させていただきます。

第1部 私たちにとっての「世界史」はいかに書かれてきたか


 第1章 近代的営みとしての歴史学

    科学としての歴史学

    近代歴史学と時代区分

    近代を基準とする歴史観のバイアス


 第2章 近代的歴史記述をいかに開くか

    近代の普遍性と世界の複数性

    近代的歴史記述に対する批判の展開

    近代的歴史記述をいかに開くか


第2部 世界史と空間的想像力の問題


 第3章 「ヨーロッパ中心主義」が描いてきた世界地図

    ヨーロッパ中心主義の2つの水準

    空間認識の「三層構造」の誕生

    三層構造をキリスト教化した「普遍史

    「普遍史」に突き付けられた3つの矛盾

    18世紀まで世界地図に描かれた「未知の南方大陸」

    啓蒙主義の時代でも「三層構造」は変わらず

    アジアを「停滞した地域」と見なした19世紀ロマン主義

    ヨーロッパ中心的な空間的想像力の遺産

    アメリカの世界戦略から生まれた「東南アジア」の概念

    「地域」という概念の再考


 第4章 アジア史から見る世界史

   注目すべきは多様な生態勘定

   地理的・文化的観点からアジアを4地域に分類

   各地域はシルクロードに沿って交流していた

   寒冷化で統治システムや社会構造が変化

   オリエントはイスラームによって、東アジアは唐によって再統一

   温暖化でトルコ化・イスラーム化した中央アジア

   多国共存体制だった東アジア

   集大成としてのモンゴル帝国

   寒冷化とともに、幹線はシルクロードから海上

   大航海時代の到来で明朝は崩壊へ

   大航海時代の落とし子としての清朝

   地中海はオリエントからヨーロッパへ

   環大西洋革命がアジアにもたらした2つの影響

   「法の支配」の起源

   「大分岐」論は正しいか

   現代史を見る視点

 

 第5章 日本は「東南アジア」をどう捉えてきたか

   ヨーロッパの地理区分

   世界地図は分割できるか

   時代とともに変わる東南アジアの地理概念

   ゾウ、パンダ、コアラに象徴される日本のアジア外交

   歌舞伎『マハーバーラタ戦記』が意味するもの

   戦後、「インド熱」と「ビルマ熱」が高まった理由

   東南アジアへの関与を強めた1970年代

   ASEANの拡大・経済成長とともに

   「東南アジア」をめぐる統合と分断

   「アジア」の中の新しい地域概念

   完全に自立的な地域概念は存在しない
 

第6章 大西洋のアメリカと太平洋のアメリ

   移住者の世界認識

   大西洋に現れた、3つの大波

   第1の波:大規模な自由貿易圏の成立

   第2の波:カルヴィニズム・ネットワーク

   アメリカ・ピューリタニズムの形成

   「大覚醒運動」による熱狂と宗教の世俗化

   熱狂は哲学を凌駕する

   第3の波:ブリテン王国による「啓蒙」というプロジェクト

   『リヴァイアサン』の扉絵が意味するもの

   収斂としてのアメリカ革命

   アメリカという永続的野蛮

   奴隷制度維持のための西部開拓

   アメリカ革命の「プロジェクト」としての南北戦争

   太平洋における帝国主義

   大西洋のアメリカと、太平洋のアメリ

   アメリカにとっての空間

   帝国としてのアメリ

 補論 イスラーム世界という歴史的空間

   イスラーム世界の歴史

   歴史学に居場所のないイスラーム世界

   イスラーム世界という枠組みのわかりづらさ

   イスラーム世界という歴史的空間

   イスラーム世界から見えてくる歴史的想像力

   イスラーム教の柔軟さ

   イスラーム世界にとらわれない必要性

   イスラーム特殊論を乗り越える


第3部 社会科学の基本概念を歴史化する

 第7章 「市場」という概念

   「市場」とは何か

   市場に関する神話

   歴史と人類学の研究から

   制度を重視した経済学

   市場と人間の経済の将来へ

 第8章 「市民社会」概念の歴史性と普遍性

   「市民社会」を語ることの難しさ

   近代西洋と「市民社会」概念

   「市民的公共性」とその揺らぎーー後進近代化国家と市民社会

   「第3の社会領域」としての市民社会とそのゆくえ

 第9章 歴史の中の「国家」

   国家とは何か

   主権国家

   国民国家

   「国家」のさまざまな形態

   最後にーー国家についての将来展望

 第10章 戦争と外交

   「戦争」「外交」とは何か

   戦いの主体と目的、手段の発展と多様性

   交渉のあり方の発展と多様性

   おわりにーーグローバル化と国家

 第11章 概念としての家族の流動化

   「家族」という概念の多面性

   近代化における家族概念の固定化

   脱近代化における家族概念の流動化

 第12章 漢字で書き、用いている「文学」

   文学という概念の批判

   翻訳概念としての「文学」

   「文学」の「古さ」

   「文学」と「世界史」

   コラム①科学をグローバル・ヒストリーで捉えなおす

   コラム②混合趣味あるいは忘却されたマルチリンガリズム

 第13章 宗教的交通の豊かさ

   宗教とは何か

   近代的な宗教

   非ヨーロッパ世界における近代的な宗教パラダイムの受容

   ポスト世俗化社会における宗教復興ーー弱い宗教性について

   宗教という概念の系譜学(1)ーー他者の古さ

   宗教という概念の系譜学(2)ーー一神教

   宗教的交通の豊かさを言祝ぐ