世界一のフィンランドの教育
ヨーロッパの教育がなぜ注目されるのでしょうか?
個人的には、アメリカやロシアといった大国よりもヨーロッパの国々の方が好きです。なぜなら、国土は小さいけれど歴史が長く、周囲の国々に揉まれながらもなんとか生き延びてきた、そんな逞しさがあるような気がするからです。
そんな中、今月発売されたばかりの「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」(岩竹美加子 著、新潮新書)を見つけたので読んでみました。
岩竹さんはヘルシンキ大学の教授で、ヘルシンキと東京の両方で子育てした経験をお持ちです。
帯には、「テストも偏差値も受験もない」「それで勉強はできるって、どういうこと?」「その秘密、教えます」と書かれています。
世界一というのは、OECD(経済協力開発機構)が2000年か3年ごとに実施している、
PISAという学習到達度調査のことです。
「はじめに」より、興味深かったところを抜粋してみます。
著者によると、
「フィンランドの教育の良さは、何よりもそのシンプルさにある。」
どう「シンプル」なのかというと、
「入学式や始業式、終業式、運動会などの学校行事がない。」
「授業時間は少なく、学力テストも受験も塾も偏差値もない。」
「統一テストは、高校卒業時だけだ。」
「一斉卒業、一斉就職という仕組みはない。」
「服装や髪型に関する校則も制服もない。」
「教育に関して地域という考えはなく、さまざまな連絡協議会、青少年育成委員会など、学校を取り巻く煩雑な組織がない。」
など。
地域という考えは、確かに変だなと思っていました。PTAの役員をやって知ったことですが、教頭先生というのは、単に校長先生に次ぐナンバー2ではなくて、(保護者を含めた)地域の総合窓口になっているんですね。公立の小中学校は、いざという時の避難所に指定されていたり、地域のスポーツ施設やイベント会場として使われていたりします。そういうことに関する雑務も教頭先生の仕事と聞いて、非常に驚きました。
PTAの役員の仕事の中にも、子どもとは全く関係のない、地域の組織のための仕事があるのも驚きでした。
PTAの役員でなくても、日本では子どもを学校に通わせるとなると、親がしなければならないことがたくさんあります。新年度当初が落ち着かないのは仕方ないとしても、ある日突然「明日◯◯が要るから用意して」と言われることが多々あるのです。一般家庭にはないものもあり、働く親は買いに行く場所や時間を見つけるのも一苦労です。しかも、使うのはほんの一時だったりします。宿題のチェックも親がしなければならなかったり、親向けの宿題(ex.コメントを書くなど)が出されたり、宿題のためにどこかに連れて行かないといけなかったりと結構忙しく、いつになったら解放されるのかと中学生になった今も思います。
その点、フィンランドでは親のストレスが少ないそうです。
「小学校から大学に至るまで教育費は無償」
「小中学校では、教科書やノート、教材等も無償で支給される。」
「学級費やその他、諸費用はない。」
「給食も、保育園から高校まで無料である。」
「入学に際して、ランドセルや新しい服など高価な買物は必要ない。」
「毎日重いカバンを背に通学する必要はない。」(いわゆる置き勉)
「持ち物すべてに名前を書く必要もない。」
「学校からの手紙やプリント類はほとんどない。」(メールシステムが使われているため)
確かに、親の負担は経済的にも精神的にも楽だということですね。うらやましい…
そして、ただシンプルでいいのかという疑問がわくかもしれませんが、そんな教育を支える理念として、
「徹底した教育無償化と平等、子どもの権利やウェルビーイング、子どもたち自身の教育への参加」
などがあるといいます。
ウェルビーイング(well-being)とは、
「フィンランドでは生きていく上での快適さ、満足感、充足感、安心、自信、健康など、幅広い意味を持つ」
そうです。
憲法で子どもの権利が規定されているのです。
学力をつけるだけでなく、心身ともに健康に育てるという点が、ストレス社会において子どもたちを育てる重要ポイントになるのではないかと思います。
章の構成です。
第1章 フィンランドで親をやるのは楽だった
第2章 フィンランド式「人生観」の授業と道徳
第3章 フィンランドはいじめの予防を目指す
第5章 フィンランドはこうして「考える力」を育てている
第6章 フィンランドの「愛国」と兵役
第7章 フィンランドの親は学校とどう関わるのか
第8章 フィンランドの母はなぜ叙勲されるのか
第1章は特におすすめです。少子化問題を解消するヒントになるのかもしれません。